最近新しくカセットMTR (Tascam Porta Two HS)を手に入れた。Tascam 414MK2を持っていたが、以前無印の壁に掛ける棚を落としてしまい、1トラックが機能しなくなっていたので新しいものがほしかった。コロナの影響で家にいることが多くなったから久しぶりにカセットMTR宅録で曲を作りたい。

カセットに合った曲を作ろうと思いポストパンクっぽい曲を作ったが、歌のメロディがいまいちどのようにしたらいいか分からず、ドラム、ギター、ベースを入れたものの頓挫してしまった。

カセットMTRを使ったことで、カセットで格好いいノイズミュージックを作っていた友人を思い出し、久しぶりにsound cloudで聴いたが、久しぶりに聴いても格好よかった。しかし、最近はやっていないようで勿体無いなと思う。最後にアップしていたのが5年前。

5年前、2015年は最近のようにも昔のようにも思える。最近、年の感覚がよく分からなくなりつつあるような気がする。

スーパーに寄ると、焼肉用の牛肉が珍しく7割引きで300円になっていた。肉とピーマン、キーコーヒーの紙パックのアイスコーヒーを買って帰った。

昨夜からチーズナンが食べたかったので駅前のインドカレー屋に行ってチーズナンとほうれん草とジャガイモのカレーを食べた。

おいしかったが、カレーもナンも油っぽく、3切れくらい食べたところでお腹一杯になってしまった。優しそうなネパール人の女性の店員さんにお願いして残りのナンは包んでもらった。チーズナンの包みを抱えて店を出る。お土産をもらったようで何か嬉しい。

帰りに気になっていた北欧家具の店に寄った。想像していたより色々な輸入家具があって面白かった。ファンシーな調度類や、車の形をしたベッドなど。しかし誰が買うのだろうか。

夜、図書館で借りたアントワーヌ・ブロンダン冬の猿』を読み終えた。

最後、旅から帰って元の街に戻った男が鏡を見ながら「そして、また長い冬がやってくる」と呟くシーンが忘れられない。

柔らかな風

「柔らかな風」という曲を作った。

 

***

開け放たれた窓辺から
柔らかな風流れ込む

通りを歩く人や
庭の木をひとり見ている

何かできると思っている
諦めていた色んなこと

どこかへ歩いて行こう
生まれたてのように澄んだ気持ちで

大空へ両手を広げ
つかまえて 手の平にあの空を

新しい朝眺めている
新しいこと探している

遠くへ歩いて行こう
生まれたてのように澄んだ気持ちで

新しい朝眺めている
新しいこと探している

***

 

曲をつくるときだいたい歌詞はそのとき読んでいる小説から思いつくことが多いが、最近はずっとグレイス・ペイリーの小説を読んでいたためそこから影響を受けた。

女性作家の小説はわりと好きなものが多いが、グレイス・ペイリーの小説は下記の通り村上春樹があとがきで言っているようにあまりない感じで、久しぶりに小説を読むことにハマった。

グレイス・ペイリーの物語と文体には、いったんはまりこむと、もうこれなしにはいられなくなるという、不思議な中毒性があって、そのややこしさが、とにかくびりびりと病みつきになる。
ごつごつとしながらも流麗、ぶっきらぼうだが親切、戦闘的にして人情溢れ、即物的にして耽美的、庶民的にして高踏的、わけはわからないけどよくわかる、男なんてクソくらえだけど大好き、というどこをとっても二律背反的に難儀なその文体が、逆にいとおしくてたまらなくなってしまうのである。”

とくに、『最後の瞬間のすごく大きな変化』の『必要なもの』が良かった。

夫と別れて一人で暮らしている女が18年も借りっぱなしだった本を図書館に返しに行き、再度同じ本を借りて、偶然別れた夫に会って話しをし過去を振り返って、2週間以内に借りた本を返せるようなきちんとした女になりたいと思い、今日こそ本を図書館に返しにいこうと思い立つところで小説が終わるというよく分からないストーリーだが、清々しい気持ちになり、新しいことを始めたいという気分になったのでそういう歌詞の曲を作った。

妻が川口の図書館で熊倉敬聡「藝術2.0」を借りてきた。気になって手に取ったが、面白くて一気に読んでしまった。

柳宗悦、赤木明登「二十一世紀民藝」、藤田一照「仏教3.0」、「感じて、ゆるす仏教」、ひいては李禹煥、遠藤利克、ゲルハルト・リヒターなど最近読んでいたもの・考えていたことを一括りにまとめているような本で、ああ、こういったことを自分は考えていたのだと、己の考えを整理するうえで役にたった。

最近流行っているニューエイジは興味がないしどうでもよいが、現代で何かあたらしいもの、面白いものをつくろうとするのならば、民藝や仏教、東洋思想などを考え、己の血肉として取り入れようとしなければ、あたらしいもの、面白いものをつくろうとすることはできない、と思う。ニューエイジを単に表層的に、いまの気分、流行りのスタイルとして戯れることはくだらない。

論考において、最後は藝術2.0の所在、藝術2.0とは何かということがあいまいとなり、尻切れとんぼのようになっている感も否めないが、確固とした分かりやすい「藝術2.0」を示すことなどできはしないし、それはそれでいいのだ、と納得した想いが読後に残った。

ウェルベックの「プラットフォーム」や、「バンコクナイツ」を観たときにも観終わった後、同じようなことを感じた。“楽園とはどこか”と探しても確固とした“楽園”などありはしないし、“楽園”であると思っていたバンコクに行ってみても変わらない生活があるだけだし、つくり手としても、“楽園”を舞台にしたからといって面白い作品がつくれるわけでもなく、最後は尻切れとんぼのように、空しさだけが残るだけだが、それでいいのだ、と思った。

車で川口図書館に本を返しに行ったあと西川口の駅前の中華で餃子、焼売、サンラータン、秋刀魚のにんにく和え、マントウを食べ、喜楽湯で2時間ばかり風呂とサウナに入って帰った。

 

勤務先が東京から埼玉に変わって通勤に片道1時間半程度かかるようになった。

電車に乗っているあいだ暇なので以前より本を読むようになった。

最近は以下の本を読んでいた。

 

禅と福音 : 仏教とキリスト教の対話 / 南直哉, 来住英俊著/南, 直哉(1958-)/春秋社/2016.8
「仏教3.0」を哲学する / 藤田一照, 永井均, 山下良道著/藤田, 一照(1954-)/春秋社/2016.9
感じて、ゆるす仏教 / 藤田一照, 魚川祐司著/藤田, 一照(1954-)/KADOKAWA/2018.5
呼吸による癒し : 実践ヴィパッサナー瞑想 / ラリー・ローゼンバーグ著 ; 井上ウィマラ訳/Rosenberg, Larry/春秋社/2001.2
語る禅僧 / 南直哉著/南, 直哉(1958-)/筑摩書房/2010.11
人間の建設 / 小林秀雄著/小林, 秀雄(1902-1983)/新潮社/2004.10
日本の素朴絵 / 矢島新執筆/矢島, 新(1960-)/パイインターナショナル/2012.10
天使エスメラルダ : 9つの物語 / ドン・デリーロ著 ; 柴田元幸 [ほか] 訳/DeLillo, Don, 1936-/新潮社/2013.5
新輯・言葉について50章 / 中村稔著/中村, 稔(1927-)/青土社/2018.5
アメリカ名詩選 / 亀井俊介, 川本皓嗣編/亀井, 俊介(1932-)/岩波書店/1993.3
灯台へ / ヴァージニア・ウルフ作 ; 御輿哲也訳/Woolf, Virginia, 1882-1941/岩波書店/2004.12
波 / ヴァージニア・ウルフ[著] ; 川本静子訳/Woolf, Virginia, 1882-1941/みすず書房/1999.10
DaVinci Resolveカラーグレーディングbook : クリエイターの実例から学ぶ/玄光社/2018.2
Filmmaker's eye : 映画のシーンに学ぶ構図と撮影術 : 原則とその破り方 / グスタボ・メルカード著 ; Bスプラウト翻訳/Mercado, Gustavo/ボーンデジタル/2013.8
木山捷平全詩集 / 木山捷平[著]/木山, 捷平(1904-1968)/ 講談社, 1996.3
中村稔詩集 / 中村稔著/中村, 稔(1927-)/思潮社/1977.9-1996.5
中村稔詩集 / 中村稔著/中村, 稔(1927-)/思潮社/1977.9-1996.5
吉岡実詩集 / 吉岡実著/吉岡, 実(1919-)/思潮社/1968-1995
吉岡実詩集 / 吉岡実著/吉岡, 実(1919-)/思潮社/1968-1995
読書の愉しみ / 中村稔著/中村, 稔(1927-)/青土社/2016.7
古今周遊 / 中村稔著/中村, 稔(1927-)/青土社/2015.12
言葉について / 中村稔著/中村, 稔(1927-)/青土社/2016.9
挟み撃ち / 後藤明生 [著]/後藤, 明生(1932-)/講談社/1998.4
詩・日常のさいはての領域 / 中村稔著/中村, 稔(1927-)/ 創樹社, 1976
詩の約束 / 四方田犬彦著/四方田, 犬彦(1953-)/作品社/2018.10
生きるということ / エ-リッヒ・フロム著 ; 佐野哲郎訳/Fromm, Erich, 1900-1980/ 紀伊国屋書店, 1977.7
ルバイヤート / オマル・ハイヤーム作 ; 小川亮作訳/Omar Khayyam, 1048-1131/岩波書店/1979.9
ハーフィズ詩集 / ハーフィズ著 ; 黒柳恒男訳/Ḥāfiẓ, 1326?-1389?/平凡社/1976.12
やし酒飲み / エイモス・チュツオーラ作 ; 土屋哲訳/Tutuola, Amos, 1920-/岩波書店/2012.10
七人の使者 ; 神を見た犬 : 他十三篇 / ブッツァーティ作 ; 脇功訳/Buzzati, Dino, 1906-1972/岩波書店/2013.5

 

ヴァージニア・ウルフはそういえば読んでないなと思い、手に取ったが、気力が続かず、途中で読む気がなくなりやめた。「やし酒飲み」も最初は面白いと思ったが、段々とそのファンタジーさがくだらなく感じやはり半ばでやめた。

最近の仏教についての本も興味をひいたものを何冊か読んだが、もういいかと思った。

現代詩についても何冊か読んで、中村稔は好きになったが現代詩手帖ユリイカの投稿欄にあるような詩には惹かれるものはないので、所謂現代詩と分類されるものは自分には関係がないなと思った。

デヴィッド・フォスター・ウォレスが46歳の歳で2008年に自死してからはあまり小説に興味が湧かなくなってしまったが、大江健三郎「死者の奢り・飼育」のような、閉ざされた状態にいることを描いたものは好きなので、「天使エスメラルダ」の島から出られないリゾート客を描いた話は、カフカ的な不条理な状況を現代的に表現していて、なかなか面白かった。

熱帯の旅行先で飛行機がいつまでも経っても飛び立たず、島から出ることができない状態をたまに夢想する。

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令和になって一月余り経ったが、相変わらず日々は慌ただしく過ぎてゆき、令和になっても何も変わらない。

ウェブ上で公開されていた即位儀式の様子を見ると、その恭しい儀式はおよそ現代らしからぬような、神話の世界のように思えて面白かった。同時に、高貴な血縁によって創られた「神話」は庶民である自分には関係はないな、と思った。

 

祝日の日々はほとんど家に篭って本を読み、晴れた日は荒川の辺りに出掛けた。

荒川彩湖までドライブし、グラウンドで野球をしている少年チームや、公園で寛いでいる人々を眺め、荒川、びん沼で釣りをした。

帰り、コンビニの横にあった唐揚げ屋で買った唐揚げを食べながら、田圃を眺めた。夕日を受け光る水田や、作業をしている農夫が美しかった。些細なできごとは、慌ただしい日々のなかで次第に忘れていってしまう。こういった美しいと感じることをなるべく忘れないようにしなければいけない、と思った。