妻が川口の図書館で熊倉敬聡「藝術2.0」を借りてきた。気になって手に取ったが、面白くて一気に読んでしまった。

柳宗悦、赤木明登「二十一世紀民藝」、藤田一照「仏教3.0」、「感じて、ゆるす仏教」、ひいては李禹煥、遠藤利克、ゲルハルト・リヒターなど最近読んでいたもの・考えていたことを一括りにまとめているような本で、ああ、こういったことを自分は考えていたのだと、己の考えを整理するうえで役にたった。

最近流行っているニューエイジは興味がないしどうでもよいが、現代で何かあたらしいもの、面白いものをつくろうとするのならば、民藝や仏教、東洋思想などを考え、己の血肉として取り入れようとしなければ、あたらしいもの、面白いものをつくろうとすることはできない、と思う。ニューエイジを単に表層的に、いまの気分、流行りのスタイルとして戯れることはくだらない。

論考において、最後は藝術2.0の所在、藝術2.0とは何かということがあいまいとなり、尻切れとんぼのようになっている感も否めないが、確固とした分かりやすい「藝術2.0」を示すことなどできはしないし、それはそれでいいのだ、と納得した想いが読後に残った。

ウェルベックの「プラットフォーム」や、「バンコクナイツ」を観たときにも観終わった後、同じようなことを感じた。“楽園とはどこか”と探しても確固とした“楽園”などありはしないし、“楽園”であると思っていたバンコクに行ってみても変わらない生活があるだけだし、つくり手としても、“楽園”を舞台にしたからといって面白い作品がつくれるわけでもなく、最後は尻切れとんぼのように、空しさだけが残るだけだが、それでいいのだ、と思った。

車で川口図書館に本を返しに行ったあと西川口の駅前の中華で餃子、焼売、サンラータン、秋刀魚のにんにく和え、マントウを食べ、喜楽湯で2時間ばかり風呂とサウナに入って帰った。